とあるまさおの討論録(ディベートログ)

とあるまさおの討論録(ディベートログ)

まさおがディベートについて思ったことをつらつらと書いていきます。ご自身の意見等あれば是非コメントしていただきたいです。Twitter→@masaoopen

R27:神Motion紹介 ~海と山、どっちがお好き?~

釣り動画の様なタイトルにしてみましたが、今回紹介をしようと思うのは「ディベートへの導入・考える練習」に便利なMotionです。


特に初心者をターゲットに意図していますが、そうでなくても脳のストレッチなどには適していると思います。

 

 

まずはこちらを考えてみましょう。

 

「夏に遊びに行くなら山よりも海が良い」


頑張って英語にするなら、


If you are planning to play outside in summer, going to sea is better than climbing mountains.


とかでしょうか。

 

(以下、このMotionに関する具体的なアイディア等を書いていきます。良ければまずはご自身で考えられてから下を読む方が良いかもしれません)

 

 

 

このMotionは、ディベートに固有な以下の難しい概念を理解・練習するのにとても適していると思います。

 

・Paradigm Comparison パラダイム比較 (SQ / APよりも正確な対立の把握)
・Objective analysis 主観に寄らない客観的な分析
・Exclusivity 相互排他性
・Uniqueness 独自性・固有性(日本語にすると少しこそばゆい気がしますが)

 

では、考えてみましょう

 

 

 

1.パラダイム比較

 

ディベートが初めての人にいきなり政策論題を見せても、綺麗に考えがまとまることは実は少ないのではないか、と思います。


例えばTHW ban gun.を出すと「銃が良いか悪いか」の議論に徹してしまい、「政策として禁止すべきか?」という視点が欠けてしまうことが多いと思います(例:政府が禁止する正当性、Black marketの論、等々)

 

或いは今度はTHW introduce jury system.とかを出すと「あれ、日本って今陪審員制度導入してるっけ?裁判員制度の事?どう違う?」みたいに不必要にSQばかり考えてしまい、Gov / Oppの世界観の比較、と言った点まで考えが及ばないこともよくあると思います。

 


【補足:SQ / APという考え方のデメリット?】


これは多くの方々がおっしゃっている繰り返し・焼き増しになってしまいますが、SQ(=現状の世界)と言うのは自分の偏見・経験に基づいたものになってしまいます。


これがディベートにおいて問題となってくる理由は

 

・自分の知っている世界がSQとは限らない(世界にはいろんな国があり日本の現状が世界中に当てはまるとは限らない)

 

・「Govの世界=AP」とも限らない
 例)THW ban gunのAPはほぼ日本の現状、THW introduce plea bargain,のAPも地域によっては現状と同じ

 

・「Oppの世界=SQ」とも限らない
これはGovが提示するProblemに対してOppがCounter planやオルタナ(Alternative)を支持することがよくあるからですね。
 例)THW ban tobacco.でGovが想定するSQは「喫煙者が自由にタバコを吸える世界」かもしれないが、Oppが支持する世界は「厳格に分煙を進めた世界」かもしれない

 

等と言った理由があると思います。

 


話を戻します。


以上の理由より、単なるSQ/APでなくパラダイム比較を意識することはとても大事になります。

 

今回の「If you are planning to play outside in summer, going to sea is better than climbing mountains.」の様にX(=海、Gov)とY(=山、Opp)を比較することが不可欠なMotionにおいては否が応でもパラダイム比較と似たような思考をしないといけない、と言うことになります。

 

 

 

2.客観的な分析

 

このMotion「夏に海と山どっちが良いか」を見たときに、きっとみんな「海で泳ぐの気持ちいいじゃん!」「山の空気が綺麗じゃん!」など思い思いの理由でどちらが良いかを考えると思います。

 

しかし他の人と話し合って議論を作るとき、他の人の自分の主観と他の人の主観の衝突を通して「それって本当なのか?なんでなのか?どう説明すれば伝わるのか?」と言うように徐々に客観的な視点が養われるのではないでしょうか。

 

最初は特に思いついたアイディアをバラまいて終わりがちなときに、客観的な視点を持つ癖をつけておくと後々とても便利になるのではないか、と思います。

 

 

 

3.相互排他性

 

さて客観的な思考を持った時次に大事になるのはExclusivity、GovとOppの世界の差を考えることだと思います。


このMotionを見て例えば「海は危ない!溺れて死ぬ!」と思いついたとします。


しかし相手からは「山道は崩れやすくて危ない!転落死する!」とくるかもしれません。


すると「じゃあ海と山は何が違うだろう・・・?」と考えた結果、例えば「海の方が救急車が来やすく、すぐに病院に運べる」と言ったExclusivityに近い考えが出てくるかもしれません。

 

或いは、
Oppの「海は熱中症になる!危ない!」に対してGovが「山も夏は暑いからどちらにせよ熱中症になる!」と来た時にOppから再反論で「山は木が多く生い茂っていて日陰も多くまた高度が高いので涼しく風も吹いているのに対し、海は熱を持った砂の地面から近く、日陰もほとんどないので熱中症になりやすい」と言ったように両者を比較した上でのComparativeな分析が出てくるかもしれません。

 


こういったように、「X is better than Y」の形のMotionだとExclusivityを考えることがダイレクトに要求されるので、考え方が難しく混乱しがちなこの概念を比較的簡単に学べるかもしれません。

 

 

 

4.ユニークネス

 

このMotionには「夏に遊ぶなら」という部分がありますよね。そのため、「特に夏にどっちが良いか?特に夏はどんな要素を重要視すべきか?」と言った視点が自然と出てくると思います。

 

例)
・山登りは冬でもできるけど海水浴は夏しかできない!(これに対しても「冬の登山は危ないので夏の方が良い!とか反論できますが」)


・夏は暑いので涼しさを求めるのが大事!(=いわゆるPrinciple / Valueに近いアイディア)
(但し「では海と山どっちの方が涼めるか?」という「Practical」な分析は必要)

 

等々。

 


「そもそもユニークネスという概念がディベートにおいてどれほど大事なのか?」というのはまあ議論の余地があるかもしれませんが、長い目で見てこの考えに慣れ親しんでおくのは悪いことはないでしょう、きっと。

 

なのでユニークネスを考えるという点においてもこのMotionは有用ではないでしょうか。

 

 

 

 

どうでしょうか?
一見して稚拙な論題に見えるかもしれませんが、意外といいMotionに見えてきませんか?笑

 


最後にオマケとして、これに似ていそうなMotionをいくつか載せておきます。

 

・高校は修学旅行として国内旅行より海外に行くことを選ぶべきだ
High schools choose going foreign countries rather than domestic travel as school trips.
(主語を中学にするとまた少し変わるかもしれませんね)

 

・弁当の方が給食よりも良い
Lunch box is better than school lunch.
(このMotionだと「誰にとって良いのか?」という点も考えられますね)

 

・日本は国民に対して出生(率)の増加を促すより移民を増やすべきだ
Japan should prioritize increasing immigrants rather than encourage its own citizens to give more birth.

 

・日本の学校は給食で和食より洋食を出すべきだ
Japanese schools should serve western dishes rather than Japanese dishes
(これはきちんとアーギュメントきちんと出るか怪しいかもしれません。ちょい思い付きです)

 

・田舎に住む方が都会に住むよりも良い

Living in rural areas is better than living in urban areas.

 


勿論これらのMotionがめっちゃいい、と言うわけでもないですし他にもエデュケ向きのMotionはたくさんあるとは思いますが、一応今回の記事の趣旨としてはこれらが似ているかなあと思います。

 


では、今回はここらへんで失礼します。