ようやく最終回です。
中々完結することがなかったMotion解説シリーズをついに終わらせられるということで、完走した感想ですが・・・
THBT Japanese feminists should idealize male individuals who have changed their family name upon their marriage.
Info: In Japanese law, either of 2 has to change their family name into their partner's one upon their marriage.
お前やんという突っ込みはさておき
アイディアを出した当初からAC内でも「面白そう」と言ってもらえていたMotionです。ありがたやありがたや
〇前提知識
Outround(Breakround)で出す前提ではあったのである程度Infoは絞って、Debaterの前提知識を問うことも兼ねようという意図はあります
学生にとっては馴染みが薄い話題の部類とは思うのですが、まあ頻繁にニュースになったりSNSで話題になったりするので、知っておいてほしい社会問題だなとは思っていました
- 法制婚をする場合は、2人の内のどちらかが必ず苗字(姓)を相手のものに変える必要がある
- 苗字を変える手続きは非常に面倒くさい。以下全部数日~数週間、ものによってはお金もかかる
- 住民票やマイナンバーの更新
- パスポート・運転免許・銀行口座・会社の変更手続き・申請など
- その他民間サービスの登録情報更新
- 上記手続きをしていないと、サービスが使えなかったりする
- 苗字を変えることの手続き以外のデメリット
- アイデンティティの喪失
- キャリアへの影響(旧姓の時の成果や論文が改姓後にも認知・利用できるか不明)
- 「家を捨てた」「相手の家に入った」と思われる
- 旧姓併記や通称としての使用が浸透していない
- じゃあ法制婚しなければいいのかというと・・・?
- そもそもしたい人生選択ができないことがハーム
- 税控除・補助金など色んな面で「法制婚」がBenefitの前提条件になっている
- 財産分与や関係の解消・その他もめ事において政府が介入・保護しづらい
- 重大な医療・治療の選択代理や面会ができない、その他民間サービスにおいて「家族」とみなされない
実質Argumentを書いているような部分もありますが、結婚・改姓するしないについてはいったんこんなものでしょうか
上記まとめると、「行政におけるデメリット」「民間サービスにおけるデメリット」「normative, perceptualなデメリット」といった感じかなと思います
もう一段階踏み込んで、「男性/女性」という枠組みも含めるとどうなるでしょうか。
(Genderがbinaryではないのはマジでもちろんですが、一旦は現行の日本の法制度に基づいた、いわゆる「両性」で考えます)
- 現状、ほとんどのケースにおいて女性側が改姓し男性の苗字になっている
- 内閣府によると、2022年4月の調査では約95%の場合において女性側が改姓しているようです
- そのため、言うても結構な数の人が「女性側が苗字を変えるのが当たり前」と思っているのも事実ですが、一方でそれを良しと思っていない人も多いです
- 自分の苗字が大事と思っている人も多い
- その他、改姓のデメリット(上述のため省略)
- 本人が望んでいなくとも、周囲のPressureやカップル内の話し合いの結果、仕方なく女性側が苗字を変えることもよくある
- 「当たり前なんだから変えなさい」とか
- 「苗字変えたくないっていうのは、結婚したくないってこと?」とか
- 「好きな人と同じ苗字になれるんだから女として幸せでしょ」とか
- その他バカあほ間抜けの色々
- 男性が改姓すると、逆に女性が改姓しないと色々Negativeなことを言われる
- 「男として情けない」とか
- 「誰が家を継ぐんだ」とか
- 「家庭を支える気はないのか」とか
- 「女なら一歩引いて旦那を支えろ」だの
- その他有象無象の色々
「あー日本って現状こんなコンテクストなんだな」というイメージを持ってこのMotionを見てもらえたら、と思います
〇基本路線・Argument
Gov
満たすべきBurdenは主に3つあります
- 現状のFamily nameにまつわる問題に対しての動きとして、夫婦別姓や旧姓使用の普及などのメッセージと比べて、なぜ「男が改姓するのがGood」という必要があるか
(対Oppのスタンス、Alternativeとの比較) - なぜ「Idealize」までする必要があるか
(Gov bench内で、MotionのWording, relevancyに対するアプローチ) - 実際にIdealizeすることで上記問題が解決できるMechanism
実際のSemi FinalではGovが上手くフレーミングして「Idealize男の改姓はPush for 夫婦別姓とExclusiveではない」というスタンスを取っていたとこもありましたが、
まあ実際問題人々の認知としては相互排反に聞こえると思うので、
基本的にその体で考えていいんじゃないかなと思います
(Govでそのスタンスを守り切れそうなら出してもいいと思いますし、Oppだったらそのスタンスを出された時にはきちんと対応する必要はありますが)
Opp
Oppとしてやることは以下のイメージでしょうか
- 大枠のスタンス(メインに据えるアーギュメント)を考える
→選択的夫婦別姓の方がベターというリベラルスタンス
or ConservativeからのBacklashがえぐいというコンサバスタンス - 夫婦別姓スタンスの場合
→概念・事象レベルとしてなぜ選択的夫婦別姓が望ましいか、また選択的夫婦別姓を押して法改正を実現することがどう可能であるか - コンサババックラッシュスタンスの場合
→どうバックラッシュが激しくなるか、またそれによりFeminist movementとして何ができなくなってどうまずいか
〇Argument詳細
Gov
- 現状のFamily nameにまつわる問題に対しての動きとして、選択的夫婦別姓や旧姓使用の普及などのメッセージと比べて、なぜ「男が改姓するのがGood」という必要があるか
- なぜ「Idealize」までする必要があるか
(Idealizeという表現でどこまでBurdenを背負いに行くかによりますが)- 現状のディスコースが不公平すぎるので、超絶Glorifyしなければ注目を得られない、人々のマインドが変わらない
(Actively supportに寄せたSoft stanceのイメージ) - 苗字を変えない男性を問題視するような強烈なメッセージを発信することで、苗字を変えさせられる女性の苦しみが伝わる。現状の「女性が苗字を変えるべき」という風潮が問題視される
(Mirroringのような路線、Stigmatizeに寄せたHard stanceのイメージ)
- 現状のディスコースが不公平すぎるので、超絶Glorifyしなければ注目を得られない、人々のマインドが変わらない
- 実際にIdealizeすることで上記問題が解決できるMechanism
- 苗字を変えたい男性、変えたくない女性の支持を得られる
- どんな人がこのキャラに当てはまるのか?と考えると面白いです。例えば「自身の職業柄」「実家の家柄・家系的に」などいろんな理由があるでしょう
- 「男性が苗字を変えること」がそこまで特殊ではない、とNormalizeできる
- Role modelが産まれる
- 単純にメディア上での露出が増える
- 何ならコンサバも(夫婦別姓・旧姓の通称使用よりは)支持してくれるのでは
- 苗字を変えたい男性、変えたくない女性の支持を得られる
Opp
- 大枠のスタンス(メインに据えるアーギュメント)を考える
- 選択的夫婦別姓の方がベターというリベラルスタンス
- ConservativeからのBacklashがえぐいというコンサバスタンス
- 夫婦別姓スタンスの場合
- コンサババックラッシュスタンスの場合
- どうバックラッシュが激しくなるか
- それによりFeminist movementとして何ができなくなるか、その「できたはずのこと」がどの程度重要か(少なくとも苗字の問題と同じ程度には重要、と言いたい)
- Feminist movementが提供している支援へのAccessibilityが下がる
- Feminist movementへのDonation, voteなどの支援が減る
- 結果として人々がどう苦しむか
Oppおまけ:選択的夫婦別姓とコンサババックラッシュを両立できるアーギュメントにできるか?
示さないといけないことから逆算すると、「選択的夫婦別姓を推進するほうが、『男性の改姓をIdealizeすること』より批判を受けづらい」ということを証明する必要があります
じゃあ「選択的夫婦別姓の方が『男が変えろ』より支持してくれる(少なくとも反対しない)のは誰だろう」って考えると、こんな感じじゃないでしょうか?
- 苗字を変えたくない男性、苗字を変えたい女性
- 自分は夫婦別姓に興味はないが、現状に不満もないので特に反対する理由もない人
あとこれは証明できそうかあんまりわかってないですが、Sexual minorityの人々にとっても選択的夫婦別姓を押してくれる方がありがたいっていうのはあるんじゃないでしょうか?
理由として例えばですが、選択的夫婦別姓に関する憲法裁判をする際に出てくる憲法が24条なんですが、これは同性婚の議論の際に出てくる条文と同じなんですよね
まああと、「男と女のどっちが苗字を変えるべきか」って議論を延々としてる団体より、「(男女によらず)苗字は好きなようにすればいい」って言っている団体の方が
Gender binary感薄いし、Proximateに感じやすいんじゃないでしょうか?
さらに言うと、「パートナーや家族の絆が『共通の苗字になること」と必然的に結び付けられている』状態は、
(同性婚が法律で実現しないとしたら特に)同性カップルにとっても好ましい状況ではないでしょう
なので示し方は難しいですが、Oppとして2つのスタンスを両方取っちゃうっていうのもできなくはないかな~、と思ってます
ちょっと雑な書き方になってしまった気がしなくもないですが、仕事納めて疲れたんで許してくだしゃい・・・
良いお年を!