とあるまさおの討論録(ディベートログ)

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まさおがディベートについて思ったことをつらつらと書いていきます。ご自身の意見等あれば是非コメントしていただきたいです。Twitter→@masaoopen

R32:Thailand WUDC 2020 振り返り③ Opening / Closingについて

今回は前回の一般的な話と被りつつも、特にOpening / Closingについて書いていきたいと思います 

 

(本当はもっとラウンドの具体例入れたかったんですが燃え尽きたので今度別個にラウンドの振り返りみたいな感じで投稿するかもです) 

 

Opening

-当たり前の話を出す

-プラのimpact

-Preemption

-横にめっちゃ反論する

 

Closing

-Openingでやるべきことは全部やる

-基本厳しい

-Relevancyの厳格さ

-ClaimとFramingをExplicitに

 

 

 

〇Opening

 

 

 

―当たり前の話を出す

 

これはいつどこに行っても当然必要なことなのですが、WUDCでも普通のことをしっかり証明しきるのが大事な気がしました

 

・相手の世界のProblem

・Harmの評価とImpact

・MotionへのUniqueness(オルタナ・Organic changeの否定/それの問題)

Problemに対するSolution(特にできてないとまじで負ける)

・Benefitとその評価

オルタナなどに対する優位性

 

などをしっかり証明するのが大事やなあと思います

必ずしも日本みたいにLogicを詰め詰めするのよりも、具体的なイメージや例をしっかり描いて伝えるのが大事だと思います

 

ちなみにレクチャーやジャッジからのFeedbackの中で「ImpactをWeighした方がいい」みたいなのをたくさん聞きました

 

これはおそらく「Impact is this!」って示すだけでなく、

・直感に訴えかけるくらいの描写をする

・他のImpact / issueとぶつけて比較する

などを明確に積極的にしないとなあと思いました

 

 

―Practical impactをめっちゃ出す

 

(具体性が足りないと後ろから抜かれる)

これはMinorityとかの部分で言った感じになるのですが、しっかりTangible impactが出るアクターを絞るのが大事な気がします

 

Economic growthとか社会へのふわっとした現象で終わらせるのではなく、「どんな人間が」「どんな風に苦しむ/幸せになるのか」という点をしっかり描く必要があるなあと思いました

 

 

―Preemptionをしっかり打つ

 

これも国内でももちろんやると思うのですが、特にチーム間の実力差がバラバラでアロケされることが多いので、横は全然強くないけど(斜め)後ろがもっと強い、みたいな状況はざらにありました(というかそれしかなかった)

 

 

例)R7:THBT ASEAN should abandon “the ASEAN Way”

 

Oppから「Sovereigntyが尊重されないと一部の国がASEANを抜けるかもしれん/非協力的になるかもしれん」みたいな話が来るかなあと思ったので、LOから来てなかったもののDPMから

 

・現状だと他国に対するPolitical retaliationとしてVetoが濫用されていてむしろASEANに非協力的になってるけど、APだとVetoされる頻度が減るからより強力的になる

・他にもFTAとかの経済メリットがたくさんあるから簡単に抜けたり非協力的になったりはしない

 

みたいな話を詰めました

 

結局Oppから予想してた話が来なかったのでどう評価されたのかは怪しいですが、サインポストとかでフレーミングして説明してるときはジャッジが結構うなずいてくれたのである程度の効果はあったと信じています(笑)

 

 

あとは上みたいなおっきなPreemptionだけでなく、自分たちのケースを補強する細かいUniquenessやオルタナ潰しも必要ならやっておかないと、後ろに強いチームがいたら反論でぽっくり死んじゃいます。要注意

 

 

―横にめっちゃ反論する

 

なんかほとんどのチームが反論が上手くない・してこない感じがしました

なので逆に言うと自分が横のチームをしっかり潰してたら横にはまず勝てると思います

 

これは単に相手の分析を否定するとかだけではなく、

・コンセンサスと争点の整理

・自分たちがどこまで示したら勝てるのか

・相手のImpactにぶつけて比較

とかも含めてしないといけないと思います

 

 

〇Closing

 

―Openingがしなきゃいけないことは基本全部やる

 

丁寧な立論とか横(斜め)への反論とか全部やりましょう。やらないと負けます笑

 

Preemptionもしっかり打っておくと、

・そもそも堅いRobustなケースになるので評価が上がりやすい、勝ちやすい

・後ろ(GW, OW)から反論されても耐えるので勝てる

ってメリットが良い感じにあります

 

 

―基本厳しい(Openingの出力・「証明した」のレベルの厳格さ)

 

上にたくさん書きまくってますが、

・そもそも他のスピーカーの英語を聞くのが大変

ESL/EPLの出力半端ねえ

に加えて、WUDCは結構Closingに対する証明責任のかけ方やEngagementの重要性が高かった気がします

 

特に、もしOpeningがメインArgumentを抜けなく完成させてきたときにはClosingがしないといけないことは

・反論

・New caseを一から全部説明する

・明確なImpactを出し他のIssueと比較優位を示す

まで膨れ上がるのでシンプルに無理じゃね?って思いました

 

逆に言うとメインケースの中の抜けを上手く見つけてこじ開けて広げていくイメージの方がいいと思います

 

良く評価されていたのはCompletely new case / argumentと持ってくるよりも、Openingの言ってることをGround / Nuance / Weighして相手にぶつける、みたいな感じでした

 

これらがどういう意味かというと(レクチャーとかフィードバックで使われていたものですが)

 

Grounding extension → 概念や分析・アイディアを超具体化する

⇒Impactを出してモラハイを取ったりメカニズムを詰めたりする貢献ができる

※めちゃくちゃ具体化しないと前と被ってると判断される

 

Nuancing extension → 概念や分析の細かいニュアンスを出していく

⇒MotionとのRelevancy / Linkageを出したり、相手の分析に対応させたりできる

※ニュアンスとはいえExplicitに強調しないと差を見てくれない

 

Weighing extension → 基準を出してBenefit / Harmを比較していく

⇒OpeningのDeadlockを解消して比較優位を示せる

※日本のようなPrincipleに基づいた価値判断ではなく、

・Frequency:どれくらいの頻度で発生するか

・Probability:どれくらいの可能性で発生するか

・Extent/Scale:どの程度影響を及ぼすか

・Long term:長期的な影響はどうか (⇄ Short termの場合はSeriousnessを丁寧に)

・Fundamentalness:どれくらい重要なものか

みたいなPragmaticをある程度定量的・定性的に比較する基準が評価されると思いました

 

 

例)R3:THW allow children to sue their parents for religious indoctrination.

Info

Indoctrination means teaching someone to accept beliefs uncritically. In the case of religion, this can include (but it is not limited to) emphasizing strict adherence to religious teachings and not presenting alternative viewpoints.

 

このラウンドでCGが良い感じに具体性とNuanceを出して1位を取ってたのですが、

OGからは「Indoctrinationは子供のChoiceとAutonomyを奪い、他のIdentityを選ぶことができなくなるので悪い」って感じの説明が来てました

 

これに対しCGは

・Allow to sueへのLinkage:子供に対する被害の評価はSubjectiveで結果ベースで個々に見ないといけない

・子供へのHarmの具体化:Religious indoctrinationは特にCritical thinkingを奪い、いろんな面で被害をもたらす

ってな感じで、OGが漏らしていた「Allow to sueのLinkage」を埋めつつ、choice / autonomyというふわっとした概念をCritical thinkingと具体化してケースを伸ばしていました

 

 

例)R8:THBT the feminist movement should support the narrative that “beauty does not matter” over the narrative “all bodies are beautiful”.

 

このラウンドではCOから

・「Women of colorが抑圧される」という議論をFeminist movementの特徴(白人で美人とされる女性が多い)を具体的に分析して補強(Ground)

・各チームの議論に対し「Possibility of change」という比較基準を出しメカニズムを出す(Weighing)

・OGにPOIした返答できてた「悪いやつは叩いてFightしないといけないんや」みたいなValue偏重スタンスに対してぶつける

(OWにもPOIで「変えられないからって諦めるんですか?」って来たので「いきなり全部変えようとするのではなく段階を追って変えるのが大事、人々は今苦しんでるんやからはよ助けてあげようや」みたいに答えました)

 

ってな感じで(たまたま)できたんですがジャッジにもいい感じに評価されてました

 

 

―Relevancyの厳格さ、Creative extensionの評価のされ方

 

Openingがメインをしっかり言ってくるからと言って、日本みたいにCreative extensionが評価されるかというとそうでもなかった気がします。そのため、よっぽど前が強くない限り新しいケースを出すよりかは既存のケースを続ける方がいい気がしました

(振り返って考えたときに、本当に抜けないくらい強いOpeningをできていたのは15点~のEFL break以上のチームかなあと思います。R9は前が1位を取ってEFL Breakしたチームだったのですが、しっかりケースを網羅されて詰みました笑)

 

 

Relevancy低いけどImpactがしっかり出るExtensionが反論されてなくても、賢いジャッジが勝手に判断(≒介入)してくる可能性もあるので要注意です。

 

 

例)R3:THW allow children to sue their parents for religious indoctrination.

(Infoは上を参照)

 

COだったんですがMotion見て「ウホExtension思いつかねワロタ」ってなったのでやけくそでReligious minority守りに行きました(白目)

 

めっちゃメカニズム詰めて、

・なんでReligious minorityの子供の方が親を訴えがちなのか

・それがどうReligious minority全体に対するStigmaにつながるか

・そうすると訴えられる恐怖やStigmaによってReligious minorityだけが子供をReligiousに育てる権利や教えを広める権利が奪われてしまう

・Historical injusticeに対するReparationとしてMinorityを守るのは大事やからこのImpactめっちゃ大事

 

って説明をしてGWからも特に反論されなかったのでギリ行けたかなあと思ったんですが、ジャッジから「State duty to reparationはNot to allow sueにつながってなくない?」って言われて撃沈しました()

 

Relevancy大事

 

 

―ClaimとフレームをExplicitに

 

さっきから死ぬほどしつこく「明確さが大事」と言っていますが、Closingでももちろん、むしろ特に大事です

(ココの話は、上手い人はOpeningでも上手にやってるので結局ポジションあんまり関係ない気がしてきました)

 

Break roundも上位に行く人は自分から「There are 3 framings」みたいな言い方をしていることもよくありました。めっちゃ分かりやすいです

 

例えばこれは去年のAsian BP Open GFですが、MGのSajid Khandaker(今年のWUDCではOpen Break, ESL 7th Best Speaker)というDhaka(IBADU)の人がめちゃくちゃはっきりと「This is framing」みたいに言ってます笑

https://youtu.be/gMgWMLFRGgA

 

どの試合か忘れちゃったのでちょっと音源発掘できなかったのですが、この人はイントロでいっつも綺麗にフレーミングをして中身に入るので個人的にとても好きです

 

 

よくフレーミングフレーミングと言われますが、個人的にはフレーミングには3種類(3段階?)あると思っています

フレーミングの意味は諸説あると思うので皆さんの思われる意味と異なった場合はそういうもんだと思っていただけるとありがたいです笑)

 

1)何の主張をしているのか[Whatのフレーミング]

2)ポジショニング、その主張の位置づけはどこなのか[Whereのフレーミング]

3)重要性、勝つべき・RFDに入るべき理由[Whyのフレーミング]

 

 

1)何の主張をしているのか[Whatのフレーミング]

 

これはそもそもの主張の中身を超明確に伝えるというフレーミングです

 

これに必要なのは「主張・分析の根幹・概要をまとめたKey phraseを作り各所に入れる」ということかと思います

 

簡単な議論は簡単にまとめられるのですが、複雑な議論を短くまとめようとすると大事なニュアンスが欠けるかもしくは短くしたせいで余計難しくなってしまったりすることが多く大変です

 

ココの絶妙なバランスを考えるのは本当に難しいので、音源や先輩から学習したり何度も練習で繰り返したりして学んでいっていただけたらなあと思います

 

 

2)ポジショニング、その主張の位置づけはどこなのか[Whereのフレーミング]

 

次に大事なのが「その分析はどこに入っていくのか」というフレーミングですね。単純な前との差異化(Differentiation)も含みますが、斜めや横のチームとのClash・対応も含んで広く必要かと思います

 

僕個人の考え方ですが、ポジショニングはBOPベースで考えて「Motionに対して」か「主張に対して」でやることが多いです

 

その際僕が大事にしていることは

 

 1]まずMotion/(他チームの)主張を細かいBOPに分解して考える

〇MotionのBOP

・似たような施策政策とこのMotionの違い(Uniqueness, Exclusivity)

・Motionの視点主語の考慮(いわゆるPrinciple的な観点、Xが何をすべきか)

・細かいBurdenを考える(actively, require-allow-restrict-banなど形容詞動詞の重み)

 

〇他チームの主張

・達成したいゴールの種類(方向性)

・どこまで達成したらそのゴールを満たしたといえるのか(Extent、程度もの)

・そのゴールは良いことなのか/重要なことなのか

・そのゴールはMotionがもたらす変化によって達成されるものなのか(Uniqueness, Exclusivity)

・細かい分析についても同様に分解して考える

 

 

 2]Motionに必要な要素・相手の主張を端的にまとめる

これからポジショニングするにあたってMotionもしくは相手の主張をとらえて相対的にぶつけていくのが大事なので、自分たちのものをまとめるだけでなく相手のものを端的にまとめることもとっても大事です

 

その際に僕が気を付けていることはMotionに書いてある表現や相手の使っていた表現をそのまま使うことです。が、もし相手の表現が極端に分かりにくくて繰り返したり引用するのがむしろConfusingな場合はこちらで綺麗にまとめなおしてあげるものジャッジに親切かもしれません

 

 

 3]入っていく・ぶつける場所をしっかり特定する

自分たちのExtensionはおそらく一定の場所にぶつけていくと思いますが、その部分をはっきり明確にジャッジに伝えましょう

 

おそらくよくあるぶつける部分は

・Motionに対するLinkageやBOPの充足の仕方

・相手の主張の中のAssumptionや不十分なところ

・Bottle neckとなっているところ

・Deadlockとなっているところ

等が多いと思うので、そこをしっかり強調するとよりジャッジに伝わりやすいと思います

 

 

3)重要性、勝つべき・RFDに入るべき理由[Whyのフレーミング]

 

そして、その主張がそのポジションに入ることが「なぜ大事なのか」という説明が必要です

 

Closingをやっててよくもらうフィードバックの1つに、「やってる事やりたいことは分かったけどなんでそれが大事なの?」っていうのがあると思います

 

日本国内(北東アジアとかでも)だとまだ「Deadlock解消したから貢献度が高い!勝ち!」みたいなことがあって、Closingに対して「その新しくした貢献がなぜ大事なのか」ということを説明する証明責任があんまり課されていないことがあるように感じます

 

個人的によく使うImportanceの押し方(かつ予選前のレクチャーを聞いてた感じ評価されそうだと思ったもの)は以下のようなものがあります

 

 

 1]相手のPreferable / Best caseに対応

相手にとって都合のいいContext/Character/Scenarioを取ったとしてもなぜ自分たちのサイドの方がまだベターなのか、という点が言えたら結構強いと思います

 

特にOpeningは異なるScenarioが2つ並んで、細かい反論を打ち合って終わっていることが多いです

 

そういうParallelかつ分析が乱立してる時はジャッジも疲れてるので、大きくConcedeして比較優位を示すと評価されやすいと思ってます

 

ただこの時の注意点は、

 

・必然的に細かいEngagementが減るのでそこで評価を下げられる可能性がある(特にがっつりConcedeしたケースの証明に失敗してるとき)

→細かい反論をしてからEven ifでケースを噛ませに行った方が安全説

・Flipするときは自分たちのClaimを支持する分析を出すだけじゃなくて相手が既に言っている分析(Mechanism/Impact)とComparativeでないといけない

→丁寧に反論と比較をしていく

 

って感じかなあと思います

 

 

 2]Opening halfのFundamental Premiseを埋めた

自分たちが説明したことがOpening debateの超超超大前提になっていて、我々なくしてはOpeningは評価できないのでClosingの方が強い、って感じですね

 

まあでもこれWUDCだとOpeningが結構しっかり説明していることが多いので、あんまり発生しないんじゃないかなあと思います

 

とはいえ早い英語でまくし立ててるけど実はMotionが扱ってる概念やシステムが具体的に説明されてない、とかはあるにはあるのでできるようになっておくのも大事かと思います

 

 

あと他には上の方に書いているWeighing / Groundingが主流ぽいですが、特にGroundingに関しては「なんでGroundしたことが大事か?」って言われると「前がやってなかったからじゃん」みたいになっちゃって押しづらい気もするので、その場合は軽くフレームとかメタしつつも中身ゴリゴリに詰めて雰囲気から乗っ取るのがいかもしれません

 

Weighingに関しては「前がDeadlockでParallelだった」とか「誰も試合の評価軸を出してない」とか「Comparativeじゃない」みたいに持っていったらいいと思います

 

 

 

最後にもう一回強調しときますが、インパクトまじで大事です

 

Principle本当に評価されなくて悲しくなるので、よっぽどMotion的に「これは哲学の話しか出ない、絶対」と確信を持てるときか「このジャッジは知り合いだけどPrincipleが好きだって知ってるわ」みたいなときじゃない限りやめといたほうがいいと思います、まじで(笑)

 

あくまでもモラハイとりに行くツールくらいがいいと思います

 

 

 

 

本当はもっとラウンドの具体例もりもりしたかったんですが燃え尽きたのと他にしなきゃいけないこと山積みでヤバいので、そのうち別にラウンドの振り返りとか(余裕があれば)しようと思います

 

 

ちなみにブログこんな感じで書いている間にスピーカータブ公開されたんですが、自分の予想や出来た感と全く異なる点がついててむずいなあってなってます

 

 

今回はこんな感じです、読んでいただいてうれしいですありがとうございます~