R53:JPDU Autumn T 2023 Motion解説②
宣言通り秋TのMotion解説を続けていきたいと思います。
(宣言の割には更新が遅い)
まさお原案でないMotionについては以下をどうぞ。
まずはRound 3から。
THP a world with dominant norm that friendly/intimate relationships in business should be minimal, to a world with dominant norm that people should actively seek friendly/intimate relationships in business
ACの中では「人と人」の親密さとかを想定したMotionだったんですが、
ラウンド的には「企業と企業」の親密さとかの話が出ていた所も多かったようで、
思考の足りなさやWordingの甘さがあるなあと反省した部分がまずあります。
(Peopleと書いてあるから人の話、という説明は一応できますが、
Round 1でWordingを変えたように、誤解を招きかねないものはできるだけ排除した方が良いのは間違いないので)
◯Wordingの意図
原案はこれでした
THP a world with dominant norm that friendly/intimate relationships in business should be minimal
後半を何故つけたのかというと、試合全体のClarityのためです。
原案のままだと、Oppの世界はどの様なNormが存在するのか?というのが結構Unclearです。
日本社会に生きる肌感覚としては「親密な関係を重視する会社も、プライベートには踏み込まない会社も両方ある」って感じですが
それだとディベートがやりづらいので、敢えて後半にOppの世界では逆のNormがDominantですよ、と書いた形です
あとはもっと言えば、後半を書くとしても代名詞とか多用して短くすることは文法上は可能なんですが
それだとその代名詞が何を指しているのか分かりづらくなってしまうので、Clarityのために色々と諦めた部分はあります笑
◯考えるべき範囲の洗い出し
このMotionで考えるべき範囲をざっくり分けると、大体これくらいでしょうか
- 社内の仕事:評価や昇進など
- 社外の仕事:契約・発注など
- 社内外の仕事における人間関係
- 仕事に関係ない人間関係
仕事関連を細かく考えると、おそらくこんな感じで
- 仕事の手続きが公平に行われるか
- 仕事の生産性・結果が良くなるか
- 仕事における苦痛や被害は減るか
人間関係を考えると、おそらくこんな感じ
- 人間関係の構築は容易か
- 構築される人間関係は良好なものか
- 上記観点に関する、仕事/職場の人間関係と仕事外の人間関係の比較
かなと思います。
これらの大前提には、
- 両世界のNarrativeはどの様なものか、人々はどのように受け取るか
- 人々はどのようにIntimate relationshipをMinimizeしようとするのか(するようにForceされるのか)
- 人々はどのようにIntimate relationshipをseekするのか(するようにForceされるのか)
という部分があります。
逆順で書いてしまいましたが、立論の際にはしっかり前提が抜け落ち無いように丁寧な流れ作りを心がけましょう
◯世界の具体化・イメージ作り
Gov
まず大事なのは、Govの世界でも「仕事の遂行に必要な人間関係は続くべき」という認識は残るという点ですね。
"Minimal"という表現を敢えて使った意図はこれですし、このモーションで一番好きな部分でもあります笑
詳しくはMinimum Minimal differenceとかでググッたら出てきますが、要はニュアンスとしては「必要最小限」ということですね
なので、このnormがどのように解釈されるかを考える必要があります
簡単に言えば
「業務に関係ない連絡は送ってくるな」
「退勤したらプライベートなので接触しない」
とかかなぁと個人的には思います
これをもう少し具体化して、人々がどのような生活を送っているか考えると
・職場の人と業務外の目的や時間で連絡を取ることは望ましくないので、ランチ時間や業務後のご飯・飲み会・交流会は基本的にしない
・仕事の人と仲良くなる必要も特にないので、趣味の話とかも別にしない
・必然的に、仕事・職場の外の交友関係に重きが置かれる
という感じかなあと思います
Opp
こっちはイメージが簡単ですね
古き良き日系大企業みたいなイメージ(よく知らないので偏見に基づく)です
ゴルフも飲み会も全力が当たり前、なんなら職場の人とは家族ぐるみの付き合いもしたりする
…というとなんだかGovに有利なイラストな気もしますが、要は「職場の人と仲良くするのは当たり前、暖かく良好な関係を築きましょう」って感じかなと
〇Argumentを考える
さてようやくGov/Oppのアーギュメントです。
(一応いうと、別にArgumentを出すのをもったいぶったわけではなく、「これくらい前提を丁寧に考えないと、ジャッジに伝わらないぞ」というのをお伝えしたかった意図が大きいです)
Gov
- Relationship buildingの圧が強く、個人の生活や健康を阻害するため良くない
- 圧が強い理由
- Normのせい
- 仲良くすることが会社全体・自分自身・相手の人みんなにとって良いことであると思うから
- 断りづらい理由
- 職場における上下関係、Power asymmetry
- 変に断って関係が悪化しても面倒だと思う
- Peer pressure・同調圧力
- 自分だけ仲良くしないと、仕事において不利に働くと思ってしまう
- 生活や健康を阻害する理由
- やりたくない活動に従事させられる
- 業務外の飲み会、休日の遊びや交流会
- 自分の管轄外の活動やボランティア
- 仕事とプライベートの線引きが難しくなり、心身共に休まらなくなる
- 飲み会とかが増えると単純に睡眠時間が削られ、出費が増え、健康に悪影響を及ぼす
- やりたくない活動に従事させられる
- 圧が強い理由
- 職場のRelationshipが特によくない理由
(職場の外の人間関係をSeekする方が良い理由)
- 職場の人間関係は自分で裁量を持って自由に選ぶことができるわけではないので、相性が悪い人も往々にして存在する
- そのような環境で人間関係の構築・プライベートの共有を強要されるのは苦しい
- 年齢が20-30歳ほど離れた人もおり、その環境が肌に合わない人もいる
- 上下関係や圧力が嫌
- 持っている価値観や趣味が大きく異なるので、交流が楽しくない(のに相手の好みに合わせなければいけない)
- Govの世界では職場で友人を作ったり部活動をしたりすることがほとんどなくなるので、自然と職場外のコミュニティや交流が盛んになる(ので、Oppの「職場くらいじゃないと交流の機会がない」はMitigate可能)
- 職場の人間関係は自分で裁量を持って自由に選ぶことができるわけではないので、相性が悪い人も往々にして存在する
- 職場でのDeep relationshipは公平公正な業務を阻害する
- 評価に私情が挟まれる
- 仲いい人は能力を無視して不当に高い評価が得られやすい
- 逆に、仲良くなろうとして積極的に交流を持つ世界だからこそ一部は仲の悪い人も生まれてしまい、その人は不当に評価が下がる
- 私情が挟まれることがよくない理由
- 仲いい/悪いは努力で変えられるものではない
- 一部の人にのみ影響があり不公平
(Govの世界では「みんなそんなに仲良くない(悪いわけでもない)」ので平等) - 特に「上司と仲良くなる」という行為は、Underprivileged, minorityにとって難しい行為
- 上司のIdentityに基づいたProximity bias(性別、宗教、出身など)
- 上司の趣味や好みを発掘して、そこにInvestする余裕がある人(ゴルフ普通に趣味として高くない?)
- 評価に私情が挟まれる
こんな感じかなと思います
まあArgumentの選択肢がとても広いというわけではないですが、1つ1つを深める話は沢山出るのと、
きちんとComparativeが何かという点を明示して話を展開するためにはClosingのExtensionも全然残るんじゃないかなと思います
Opp
- 友好な関係があった方が職場の環境が良くなるため個人・企業にとってもよい
- 精神的安全性
- 周りに仲いい人がいることは快適である
- 自分はこの組織のために頑張るんだ!と思える
- 自分の頑張りもみんなが見てくれている、評価してくれる、と信頼できる
- 無駄な不安に駆られることがない(陰キャ分析)
- Govの世界だと、周囲の人はみんな「よく知らない人」になるので、「自分は周囲からどう思われているんだろう?」と不安になる
- 周りに仲いい人がいることは快適である
- 業務上の効率・メリット
- 仲が良いと、困ったことなどをすぐに相談することができる
- 仕事のわからない部分
- ハラスメントなどホットラインとしての機能
- 交流を通じて周囲の人の性格や好みを深く理解できるので、業務の内容や働き方のスケジュール的に、その人に適した分担ができる
- 仲が良いと、困ったことなどをすぐに相談することができる
- 精神的安全性
- 人間関係や友好度合いが評価に影響を及ぼすのは(ある程度は)よいことである
- Proximity biasはGovの世界でも存在する
- 学歴
- 「男・白人だから仕事ができそう、賢そう」
- 「女性はEmotional laborが適している」など
- 人間関係を構築する方が、上記Biasを直接RemoveするよりAccessibilityが高い
- シンプルにUnchangeableなIdentityに基づくBiasが多い
- 仲良くなるという行為は頑張ればできなくはない
- 仲が良いとIntentional discriminationが減るうえ、意識的にBiasをRemoveしようと思ってくれる
- 相談しやすい、問題を指摘してくれやすい
- 仲が良いので「相手に悪いことはしないようにしよう」と思ってくれる
- Proximity biasはGovの世界でも存在する
- 職場での人間関係・交流は非常に貴重かつ重要であるので、そこで仲の良い関係を構築できる方が良い
- そもそも人間が「職場」で過ごす時間はめちゃくちゃ多い
- 睡眠を除くと平日の半分近くは仕事をしている
- それだけ長い時間を過ごす場所であるならば、周囲と仲良い方が幸せである
- 職場の外で人間関係を構築するのは難しい
- 物理的に接触機会が少なく、自分からActively seekするのが難しい
- オンラインでのコミュニティなどあったとしても、対面で交流する方が楽しいので劣る
- 他の人も多くは仕事をしている、かつ/また家庭の時間を優先されるなどの理由で、「ただの友人」に割かれる時間は(特に歳を経るにつれて)目減りしていく
- Govの世界ではMeaningfulな人間関係・友人との交流を持つことが難しい以上、多少PassiveだったりPressurizingであったとしても交流があった方が個人は幸せである
- そもそも人間が「職場」で過ごす時間はめちゃくちゃ多い
といった感じでしょうか。
日本社会を生きる人間としてはOppが結構当たり前ですが、
ディベーター的な目線だとGovの方がいいじゃん、とも思えるので、
個人のバイアス含めてもある程度はフェアで楽しいMotionなんじゃないでしょうか(と思いたい希望的観測)