とあるまさおの討論録(ディベートログ)

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まさおがディベートについて思ったことをつらつらと書いていきます。ご自身の意見等あれば是非コメントしていただきたいです。Twitter→@masaoopen

R55:JPDU Autumn T 2023 Motion解説④

せめてこの解説シリーズを終えないと年を越せない、とは思っています。ええ。

 

Rookie GF:

THW force citizens to serve several years in industries which the government deems to be important for country's economy/society but severely lack labor (e.g. agriculture, nursing for Japan)

 

 

Motionの意味や基本的な概念はシンプルだと思うんで、サクッと済ませようと思います。

 

〇参考:類似Motion

・THW introduce(abolish) mandatory military conscription

・THW impose tax on citizens who actively chose not to have a child

・THW impose tax on citizens who do not live with their elderly parents

・THBT aging society should propritize influx of immigrants rather than raising birth rate

 

 

〇基本対立

まあ上記類似Motionを見たら大体わかるかと思うのですが、基本的なイシューとしては以下のようになるかと思います。

  • 現在国はどのような問題に直面しているのか、どのように深刻なのか
  • そのためにこのMotionを取る(個人の権利を制限したりする)のは正当か、国民の義務といえるか
  • このMotionは全体として個人・社会を幸福にすることに成功するか逆効果か

 

こうやって書くとこの3つが全部バラバラの論点のように見えますが、もちろん全て密接にかかわりあっています。

特にPrincipleを考えるときにこの「独立しているわけではない」というのは重要で、

 

「個人の権利を制限するのは正当であり国民の義務である」という説明は、基本的には「個人の権利を制限することが目的・善ではない」という考えが根底にあり、

他者や社会全体に利益をもたらすために必要な犠牲として権利の侵害が正当化されうる」というのが大筋になっています

 

なのでまず基本的にProblemの存在がほとんどの前提になってきますし、

Motionを取ることによるSolutionも全く立っていない状態ではPolicyとしての正当化も難しいでしょう。

 

これ私もたまに忘れちゃうことがあるんですが、以下のようにSocial movementのMotionとかでも大事になってくる考えだと思うんですよね

  • THS the tactic of mirroring employed by minority movements
    (mirroringが何かわからない方は、面白いトピックなのでぜひ調べてみてください)
  • THBT it is in the interest of Japanese feminists to actively provide support for 弱者男性(Jakusya dansei) 【Tokyo Mini 2023 Round 1】

 

どういうことかというと、

例えばMirroringの例として「女性は感情的な生き物でヒステリック」という差別に対して「男性は人間の感情もわからないゴミカスロボット」という対抗した表現ができるかと思います

ただこれって別に「男性を苦しめる・不快にさせること自体が善」とは言いづらいと思うんですよね(別にそういうケースを出してももちろんいいんですが)

それよりは「男性が不快に思うかもしれないが、それをきっかけに潜在的な差別について考えてくれる」とかそういうメリット・正当性になると思いますし、

 

弱者男性のMotionは若干逆?の考え方になるかもしれないのですが、

Feminist movementの目的って「女性を助ける(とか性差別全体を解消するとか)」ことであって「男性を苦しめる」ことではないので

「とりあえず苦しんでいる弱者男性がそこにいれば助ければええやん」って話は普通に立つと思うんですよね(それを男性目線の私が言うことは若干問題性を孕んでいますが)

 

ただこの話がめっちゃ強いわけでもない理由は「リソースとかの観点で苦しんでいる女性を助けることとトレードオフになる」ってのがあるからで

別に「男性を助けること自体がダメ・重要ではない」ということはないと思うんですよね

 

 

まあなので話を元に戻して一般化すると、

「その行為・帰結自体の善悪」を語るImpact, Principleなのか「目的達成のための手段として正当な犠牲・必要悪」を語るPrinciple(Justification)なのかは常に意識して区別するようにしましょう

 

もちろん、何を「目的達成」と置くかによってもBurdenが変わるのでそのあたりも考える必要はめっちゃありますが。

 

 

 

〇Govの路線:現状の問題はなにか?

どこまでBurdenを負うかの戦略や、OGにマターを取られたからもっと風呂敷を広げてでかい話をしようとか色んな状況に応じた考え方はありますが、自分だったら出すかなというProblem-Solutionの路線はこれくらいかなと思います。

 

  1. 労働者不足によりサービス・商品供給が困難
    • Motionを取るだけでまず短期的に解決できる問題
    • 「その産業がどれだけ大事なのか」「どれだけ人不足が問題を引き起こしているか」の説明が大事
  2. 劣悪な労働環境
    • 労働者個人もかわいそうだし、「労働者不足を引き起こしている原因の1つ」としてもFramingできる
    • Motionを取ると「(全)国民が数年間働く場所」となるので、「数年間働くことになるなら労働環境良くしてほしいよね」という世論になる
  3. 関心・政府の支援の欠如
    • みんな関心がないから選挙の重要な論点にならないし、話が上がっても棄却されがち
    • Motionを取るとみんな過酷な現場を経験したからこそその深刻さがわかるので、例えば政府も予算を増やしやすいし支援をしやすい
      (根本的には2と似ているが、2は「自分事」として環境改善を望むのに対し、3は「他人事・社会問題」として捉えているニュアンスもある)

 

こうやって一覧化すると「Govの話少なくね?」って思う方もいるかもしれないんですが

1つ1つの話はきちんと分析しないといけない部分が多いと思うので、そこは全部を薄くOGにさらわれたとしてもVertical extension*の力が問われるんだと思います
(*Vertical extension:端的に言うと「Openingと同じ路線だが中身の質や細かい差分・見せ方などで上回る戦略。
対立概念はHorizontal extensionなどと言われ、Openingと異なるケース・大きなArgumentを出して上回る戦略)

 

 

 

〇Oppの路線

Oppとしてやるべきことは超ざっくりわけると2つになるかなと思います

  1. このMotionは不当な権利の侵害である
    • そもそもこのMotionが不要である
      • 既に問題は認知されて改善に向かっている
      • Technologyによる労働力の補完
    • 個人の権利・生活を侵害しすぎていて流石にダメ
      • 数年間人生・仕事を奪うことになり自己決定を大きく侵害する
      • 特に農業・介護など働ける場所が特定・限定されているので、住環境や人間関係も影響を受けてしまう
  2. このMotionを取ることで余計に産業が悪化する
    • 労働環境は改善しない、むしろ悪化する
      • 放っておいても「国民の義務」として労働力が供給される
      • 国民側も「数年間だけならいいか、それよりもっと人生に影響がある他の部分を重視してくれ(経済全体・医療・教育・環境問題とか)」と思う
    • Technologyの導入・業務や業界の効率化・改善が進まない
      • どうせ労働力が供給されるので、高い導入コストを払って業務を改革する必要がない
      • 農家・施設や仲介の人材企業も全てこの「国民の義務」による補助金とかマージンで儲かるので、わざわざ労働の受け入れを減らして別のことをやろうとは思わない
      • 政府とつながりの深い一部企業が政府から優遇される形で労働力や支援を受ける形になるので、公平な競争を阻害する
    • サービス・商品の質が低下し危険である
      • 上記の様な状況の結果として「自発的な労働者」が大幅に減少し「義務労働者」ばかりになる
      • 技術・ノウハウが蓄積継承されないし、モチベも低いからちゃんと働かない
      • 農作物が不作続きになって供給不足・価格高騰が起きたり、介護現場における事件事故が増加する

 

 

こんな感じでしょうか。

もしかするとOppの方が若干Specificな知識というかイメージを持てないと分析出しづらい部分があるかもしれないですが、

私たちの生活にとっても重要な話なのでぜひリサーチとかしてもらえればと思います。

 

 

 

〇まだ物足りない方のためにぃ・・・

これでも「Extensionないわふざけんな!」っていう人がいるかもしれないので、
どんなMotionでも大体使えるExtensionの考え方「世界観・Normの変化」を考えてみましょう

 

これどういうことかというと、まあいろんなPolicy(広義)Motionがあると思います

THW(動詞)Xのに来るものだけでもcriminalize, tax, subsidize, incentivizeとかありますし

政府以外が取る行動としてGlorify, criticizeとか色々あると思いますが

どのMotionでも実は大事になるのは「そのXを人々がどう捉える様になるか」という点はあるかなと思います

 

 

いくつか例を挙げてみます。

 

THW remove all criminal penalties for knowingly exposing partners to HIV. (NEAO[NEADC] 2017 Round 6) 

 

最初に出てくる話としてはPrinciple justificationだと思うんですけど、大事な点として「HIVという病気が世間的にどのように見られるか」という部分があると思います

 

簡単(Openingから出そうな部分)だと「『自分がHIV持ちと申告したら、自分のパートナーが犯罪者扱いされるかもしれない』と思って病院に行ったり周囲に言いづらい」みたいな話は出ると思いますし

もっと広くとらえて「HIVというだけで犯罪被害者のように過剰にかわいそうとして扱われてしまう」みたいな話は出うるかなと思います

 

それ単体でImpactになりうるし、話を器用に伸ばしてFramingしたら色んなClashを作って勝てると思います

 

 

THS the use of "Lustration" in newly formed democracies. (Tokyo Mini 2023 Round 3)

"Lustration" is a policy which involves the temporary removal (usually a period of 20-30 years) and political exclusion, often without trial, of officials at all levels of the political system associated with former regimes and their political parties.

 

これも最初(と言いつついろんな話があるのであれですが)は

  • 国民がIrrationalにPast regimeの人を選んでしまうのか、Rationalに世良べるのか
  • Past regimeの人は有能なのか、他にまともな候補者はいるか
  • 一極集中・中央集権みたいな民主主義は健全か
  • Lustrationの正当性はあるか

とかいろいろあると思うんですが、

 

Norm的な分析を出すと

  • Gov:Past regimeがやったことやそのカリスマ・政権全体を「ダメです!」というNormを作ることができる
  • Opp:結局Past regimeをみんな大好きなんだったら、むしろ「裁判や選挙すら経由せずにPast regimeを排斥する現政権・民主主義がクソ」というNormになる

のようなExtensionを出して、綺麗にFramingして抜くことができるんじゃないかなと思います

 

 

後もう1つだけいくと、

THP a world where ReLife Laboratory exists (Japan Womxn's Nationals 2023 Grand Final)

ReLife Laboratory is a secret state owned company which provides a programme called ""ReLife"" targeting at people who are socially detached (example of these people includes but not limited to NEET, those who are depressed/traumatised by society).

If you are chosen as a participant of this ReLife programme with your consent, you can choose to take a pill which physically recovers your body condition back to how it was when you were around 18, and you will be sent to high school selected by the laboratory with all the expenditure subsidised.

You will spend one year as a high school student and according to your activities you will be introduced to some corporations as future career support when the programme finishes. After the programme, you will go back to your life with your memory fully reserved while the people who were in touch with you during ReLife will forget about you.

However once you expose you are under ReLife or somebody outside of ReLife organisation recognises it, the programme immediately gets cancelled and you will have no future career support.

 

これの実際のGFで確かCOが出してた話なんですが、

ReLifeがある世界だと「Drop outしてもReLifeでやり直せばいいんだから、ReLifeに行けない人やReLifeでも失敗してDrop outから抜け出せない人へのStigmatizationがより悪化する」というのがあった記憶です

 

ガチで起きそうですよね?

って思っちゃうのが、Norm系Argumentの良いところです。

 

 

 

で、今回のMotionに戻りますが

 

Govだと「農業や介護というのは『国民の義務』といわれるほど重要とされる産業やそこで働く人はNational heroのように認知される」みたいに言えると思いますし

逆にOppだと「『国民の義務』といわれるほど泥臭い、人々から好まれない産業と認知される」と言えると思うので

そこをベースに、じゃあ人々がどう動くか、Discourseがどうなるか、みたいな話が出せると思います

 

 

困ったらみんなNorm, Discourse系の議論を出しましょう