とあるまさおの討論録(ディベートログ)

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まさおがディベートについて思ったことをつらつらと書いていきます。ご自身の意見等あれば是非コメントしていただきたいです。Twitter→@masaoopen

R51:Japan Womxn's Nationals 2023のMotion解説 GF編

忘れないうちにとりあえず筆を持つ(キーボードをしばく)事はできました!えらい!

 

R50に引き続き、BOP設定やスタンスについて話していこうと思います

 

Info:

ReLife Laboratory is a secret state owned company which provides a programme called "ReLife" targeting at people who are socially detached(example of these people includes but not limited to NEET, those who are depressed/traumatised by society).
If you are chosen as a participant of this ReLife programme with your consent, you can choose to take a pill which physically recovers your body condition back to how it was when you were around 18, and you will be sent to high school selected by the laboratory with all the expenditure subsidised.

You will spend one year as a high school student and according to your activities you will be introduced to some corporations as future career support when the programme finishes.
After the programme, you will go back to your life with your memory fully reserved while the people who were in touch with you during ReLife will forget about you.
However once you expose you are under ReLife or somebody outside of ReLife organisation recognises it, the programme immediately gets cancelled and you will have no future career support.

 

THP a world where ReLife Laboratory exists.

 

 

  • Motionの定義・解釈について

沢山書いていますが、要点に絞るとこんな感じかなと思います

ReLife研究所という政府が秘密裏に所有する会社が

NEETなど社会から隔絶されている人を対象に

・全額負担して高校生活を1年間過ごさせる福祉プログラムをします

・対象者は記憶を保持したまま元の生活に戻るが、ReLife中の周囲の人間は対象者のことを忘れるし、他の人間誰もReLifeのことは知らない

 

ReLife読んでましたねえ・・・

元々はcomico連載の漫画だったのが、アニメ化もしたんですよね

面白いのでぜひ見てください

https://www.comico.jp/comic/23

relife-anime.com

 

 

  • BOPについて

MotionのWording的に、かつ現実の福祉政策とか的にまあ当たり前だろと思うかもしれないのですが、

このMotionって「ReLifeが絶対的に一番優れた福祉政策・更生プログラムである」という証明責任は全く無いんですよね

別に、Govの世界でReLife以外の職業訓練なり生活保護なりセラピーなりコミュニティでの交流なり、どんな福祉政策が共存しててもいいわけですよ。

 

そうなってくると、特にGovとして意識したいのは以下の3点ですね

・Govにとって都合のいいReLifeプログラムのストーリー、成功はどのようなものがあるか

・なぜそのストーリー、成功がLikely to happenであるといえるか

・ある程度相手に譲歩したEven ifのケースはどのようなものがあるか

 

 

上記を踏まえて、ReLifeプログラムってどんなものか具体化してみましょう。

ここのポイントは、全部がArgument, Analysisに直結するかどうかは一旦置いておいて、とにかく具体的なイメージを持つことです。

・一連の流れ

~開始まで~

対象者のざっくりとしたリストアップ→ReLife適合性の判定→ReLifeをするかどうかの最終判断・合意取得→ReLife開始前準備(身辺整理、学校生活の説明、プログラムの目標設定など)

 

~開始から~

ReLife開始(入学or転校の扱い)→日々の経過観察・指導→テストなど成果を図る仕組み

(学校のもの、ReLife独自のもの)

 

~終了前後~

ReLifeでの成果をまとめる→振り返り面談など→ReLife卒業可否の判定→ReLife卒業後の進路の調整→卒業、社会生活への復帰

 

・関わって来る人

ReLife前の環境における周囲の人間(職場、友人、家族など)

ReLife Laboratory関係者(学校の先生、友人など)

ReLife Laboratory関係者(研究所での分析担当や、ReLife対象者を直接担当し日々の指導を行う人など)

ReLife卒業後の環境における周囲の人間

 

ここまで見て、「Infoにそんな事書いてないやん」って思う部分めっちゃ多いとは思うんですが、

こういうふわっとしたMotionって全部の情報をInfoに書ききれるわけ無いですし、

大事なのは「Reasonableでありえそうな範囲」の情報をInfoにある情報から延長させて、「具体的」かつ「できれば自分たちに都合の良い分析・前提となるように」説明することです

 

コツとしては類似のシステムや概念から引っ張ってくるのがまあ丸いですね。

 

 

  • ここまでの総括

かなり書いちゃったので、Govの目線(といいつつOppもClashするので試合全体の争点)としてまとめると

ReLifeの対象者はどのように選ばれるのか、ReLifeの対象者の特徴

ReLifeでどんなことをするのか

ReLifeの中でどのような経験・感情を持つのか

ReLifeでどのような経験スキルを得るのか、それは将来どのように影響を持つか

ReLife後の進路はどのように決まるか、どのような生活を送るか

これらについて、登場アクターのIncentiveとCapacityを分析していくイメージです

ReLife LaboratoryやReLife対象者など)

 

 

  • Govのアーギュメント

 

0.BOPの押しつけ

・Oppは「どのようなケースにおいても、ReLifeが他の制度と比べて特に不適切」と言う必要がある

A)通常の就職支援などを含む色んな福祉政策・制度の1つでしかなく、対象者の特性や状況に合わせて最適な方法を選択できるから

B)Govの世界ではReLifeは数十年以上継続して実施しているはずであり、多少のシステムの欠陥などは既に改善されているはず。他の福祉制度にも何かしらの問題点はあり、改善されているか残っているかの状況であり、ReLifeに問題点があるからといってやってはいけない理由にはならない

※但し、「じゃあGovがやりたいことはなぜ他の福祉政策ではできないのか?」という指摘とSymmetricなので、Unique benefitはきちんと出すこと

 

1.ReLifeが有益なケース①:単純な勉強のやり直しや高卒認定レベルの学歴

・Problem:社会性に大きな問題はないものの、過去の家庭環境などで高校卒業や同程度の学力・学歴がないため、就職や生活が困難になっている人も多い

・Necessity:かといってその人が自分自身で高校に入りなおすには資金・環境的な問題が多い

・Solution:学び直しによる学力・学歴をもって就職や資格取得がより容易になる

・Uniqueness:ReLifeで実際の18歳に戻って自然な環境を提供することで、(Oppの世界で普通に高校に通わされるより)勉強に専念できる。またReLifeのコネで就職先がある程度は補償されているメリットも有る

 

2.ReLifeが有益なケース②:人間関係・社会性の獲得

・Problem:これまでの経験など色んな理由から、人間不信だったりコミュニケーション能力に問題がある人がいる(職場でのパワハラなどなど)

・Necessity:仕事やお金が無い人にとって、人との交流の場を持つ機会はとてつもなく限られているため、福祉制度という形での機会提供が必要

・Solution:高校でクラスメートや部活仲間と交流することにより、人との会話のスキルやそれに対する自信を獲得することができる

・Uniqueness:高校はカジュアルな繋がりによりコミュニケーションを練習することができる(詰めたり成果を求められたりする仕事と異なる)。また、ReLife職員の手厚いサポートもあるためやりやすい

 

3.ReLifeが有益なケース③:高校時代の経験が無いことによる精神的コンプレックスなど

・Problem:「高校に通えていなかった」「高校で◯◯な失敗をした」という環境・経験に起因するコンプレックスやトラウマを一生抱え続けている人がいる(

・Necessity:トラウマの起点が高校生活なので、どんなことをしてもトラウマがなくなることはない

・Solution:高校生活をやり直す事ができるので、そのトラウマを克服できる

・Uniqueness:Necessityと同じ(略)

 

4.その他、どこかの分析で使えそうなUniqueness

・1年後にはReLife関係者は記憶を消されるからこそ、失敗を恐れず色んなことに挑戦できる

 

 

 

  • Oppのアーギュメント

疲れたので要素だけ並べて簡単に・・・

 

1.そもそもReLifeうまくいかんぞ

・根本的な学力や勉強の習慣の欠如が問題なのに、いきなり高校2-3年の勉強難しい時期に入れてどうすんねん

・高校や対人関係にトラウマがあるなら、そのトラウマを再度体験させてどうするねん

・転入生は友達いないしコミュニティからハブられるぞ

・ジェネレーションギャップひどすぎてまともに会話したり仲良くなったりできないぞ

・「1年後には自分はどうせ忘れ去られる」って思ったら虚無感で何もできないぞ

 

2.他の政策の方が良い理由

コスパが良い(ReLifeはとてつもなく手厚いサポートが必要で、そのお金は色んなものに使えるはず)

・柔軟性が高い(高校の授業とか究極的には簡単には変えられないし自分のペースでできないので、資格取得支援とか職業訓練とかのほうが良い)

・期限がそこまで厳格には決まっていない

・他人とのCompetitionを過度に煽るような仕組みもない(学校の学習とかテスト・入試は競争を煽るようになっている)

 

3.マクロな観点

ReLifeは以下の様な複数の観点から政府にとって都合が良いので、他の福祉政策よりも優先されがち。結果として、ReLife拡充の動きになって、ReLifeの存在が(色んな観点からより良い可能性がある)他の福祉政策とMutually Exclusiveになるので良くない

・制度運営の観点:学校教育に丸投げできるので、金は多少かかるかもしれないが、行政の人的コスト削減や責任論・批判から逃げやすいというメリットがある

・Self-helpのNarrative:上記に加えて、「政府は十分な環境を用意したので、後は学校の中で個人が頑張るだけ」というのがReLifeの位置付け。なので、ReLifeという制度の良し悪しや改善策は議論の俎上に上がりづらい(失敗=個人のせい、となるから)

・そもそもこの機関・制度ってPublicly secretだったらAccountabilityもクソもないのでは

 

仮にこの機関・制度がPublicly visibleなものであったら、

3に書いた自己責任論・Self-helpのNarrativeやAccountabilityの話ももう少し広がるかもしれないですね(Gov/Opp双方の観点から)

 

 

 

  • 最後に:ケースの選び方・出し方について

このMotion(や秋T R4で出したSan Pedro Prison Structure)のように、「何かしら膨大な世界を議論するMotion」の場合、ケースの優先順位を考えたり、Extensionを捻り出すにあたり、

大事な要素ではあるが忘れられがちなポイントがあります。

 

1.制度・世界観の根幹に関わる話

秋T R4のSan Pedroでいえば、「刑務所内のルールは刑務所内の選挙で決定されます」というのはほぼ全ての分析・アーギュメントの内容に大きく関わってくるので

自分たちから出しておかないと、容易に他のチームに乗っ取られる可能性がありますね

(詳しくは秋TのMotion解説もかくかもしれないので、本記事ではスキップします)

 

今回のReLifeで言えば、「どんな人がReLifeを行うのか」、もっと言えば「政府やReLife運営者はどの様なIncentiveを持って、どの様な手法でReLife対象者を選ぶのか」といった大前提の部分だったりとかは大きな影響がありますよね

 

他にも例えば超雑ですが、「対象者がActively consentしてReLifeを行っているのだから、何らかReLifeにデメリットがあったとしても、Choiceとして重要」といった分析も出せなくはないですよね

(Impactに欠けるので、少なくともこの分析をこのニュアンスのまま出すことは多分無いでしょうが)

 

 

2.制度・世界観の(概念的な)大枠を捉えた話

これはReLifeや秋T R4 San Pedroのように、複数要素が入り混じったMotionをやる際や

ないしClosingのExtensionに困った時に大事になるのですが、

「色々書いてるけど、このMotionって要は概念として何をやりたいの?」という部分に立ち返るのはとっても大事だったりします

 

でないと、仮にInfoの細かい一部分にフォーカスして自分たちが完璧にケースを建てたとしても、負けるリスクがいくつか存在してしまいます

・概念・Relevancyの観点から、Motionの一部の話しかしておらず、直接的・総体的にMotionの肯定・否定につながる話ができていない

・相手のPrincipleやスタンスに反しない限り、相手チームは細かいAlternativeをサポートすることができるので、局所的な前提に基づいたメリット・デメリットであればあるほど、Necessity・Uniquenessを大きく削られる可能性がある

 

といった感じです

 

 

3.長期的な・社会全体のNorm・Discourseの変化

このMotionの有無(Gov/Oppの世界)によって、そもそも社会全体のMoralityや何かしらの認知・価値観が大きく変わる場合があります

ReLifeのMotionで言えば、(仮にReLifeが公的に認知されるものであった場合は)

・失敗してもやり直すことができる(ポジティブ)

・やり直す事ができるからこそ、失敗したままのやつは怠惰なだけ(ネガティブ)

といった分析も出せますよね

 

ですがこれはこういった広いMotionに限った話ではなく、

もう少し狭い・カチッとしたPolicy Motionとかでも当てはまったりします。

 

例えば秋T Pre-SFで出されていた天災天才的なこのMotionだと、

THBT VTuber production companies should unilaterally prohibit "Kirinuki" channels, instead of continuing current effort to spread compliance towards the "Kirinuki" guidlines

(今回は主題ではないのでInfo略。UTDS Motionサイトなど見てください)

 

切り抜き自体の良し悪しにフォーカスがまず行くと思うんですが、

「そもそもなぜVtuberは業態として体調を崩すほどの長時間配信が横行しているのか」

「切り抜きにより『面白い瞬間だけ切り取って広める』というのが当たり前になっている状態だと、ランダム的に発生する面白い瞬間を少しでも捉えるために、長時間配信になりがち」

みたいに、マクロな視点でアクターがどのようにIncentiveや行動を変化するかという話も出せますよね

 

 

まあまあこんなものは書き始めると切りがないのでここで筆を置きますが、

秋TのMotionについてはできれば解説記事出したいなと思ってるのであまり期待せず期待していてください。

 

もっともっと余裕があれば、1-2年位先延ばしにしていたSpeaker scoreの付け方・見本スピーチとなぜその点数になるのか

みたいなものもやりたいなと思っているので

年明けに出てきたら天才位に思っていてください()