とあるまさおの討論録(ディベートログ)

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まさおがディベートについて思ったことをつらつらと書いていきます。ご自身の意見等あれば是非コメントしていただきたいです。Twitter→@masaoopen

R49:ジャッジアロケーションのやり方

最近忙しすぎて禿げました。嘘です。

 

Keio Debate OpenとSophomon Cupで運営(AC)して、The Kansaiはディベーターで出て、ついでにHPDUのジャッジもして、体力が底をつきましたが

 

「これ資料とかで見たことないな?」って思ったので、ACとして何を考えてジャッジアロケをすべきかを書いて残したいと思います

 

簡潔にサマリするとこんな感じです

(コンフリクトの反映は当たり前なので省略します)

  • ジャッジ・ディベーターの属性・アイデンティティを考慮しつつ
  • 客観的な指標を用いて
  • 接戦になりそうな試合、及びブレイク可否に影響のある試合にいいジャッジを優先して配置する

 

 

 

○参加者の属性

皆さん自分がアーギュメントを作ってスピーチをする際に、「人はバックグラウンドによって経験・知識・価値観が異なる」という説明を出したことがある人は多いのではないでしょうか?

ディベート・ジャッジにおいてももちろん当てはまります

 

では、ジャッジアロケにおいて考慮すべきジャッジの属性とはなんでしょうか?

 

 

辺りかなと思います

 

ちなみに、誰をIAとして招待するか検討する際もこれと似たようなことを考えると思います
(AC・他のIAとできるだけ異なる属性の人を選ぶ、など)

 

ここで私が解決策まだ思いついていない超特大カベにぶち当たるんですが、ジャッジの方の性別・ジェンダーってどう扱うのが一番いいんでしょうかね?

 

大会参加登録の際に効くのは1つの手ですが、

  • 大会運営に対して自身の性別・ジェンダーを公開しなければならないのか?
  • 公開しない場合(「回答しないを希望」など)も、それはそれで問題があるのではないか
    →Cis-heterosexualの人間は多くの場合、自身の性別・ジェンダーを公開することに抵抗がないので
    公開したくない人=つまりマイノリティです、と言わせているようなものではないか?

とか問題じゃないかなあと考えているのでこれまで大会で実施できたことはないです

 

結果として、自分の知識(本人や他人から聞いた話)を用いつつも

最終的には名前とかから勝手に属性を推測してアロケするというマジで最悪なオプションを取ってしまっている現状です

 

解決策募集です

 

 

○客観的な指標を用いる

 

「この人ジャッジ上手い、前の大会でプライズ取ってた」
「あの人ジャッジ下手、前にイラジャされた(って友だちが言ってた)」
「この人ジャッジスコア高いけど、名前聞いたことないな・・・本当に大丈夫なの?」

 

これ全部、主観的ですよね一応

ジャッジをアロケする時は「ジャッジが上手い人かどうか」を判断して適切な部屋に入れる必要がありますが、

マイポリシーは「極力その大会でのジャッジスコアだけ見るようにする」ということです

 

以前の噂・偏見や評価が現在のその方のジャッジ能力に当てはまるかどうか不明という理由ももちろんありますが、

「この大会の参加者がつけた点に従ってアロケする」のがその大会参加者とのReciprocityかな?とか思ったり思わなかったりします

 

本当にジャッジの数が少なすぎてチェア人材に困るときとかは、「この人何故か点数低いけど大丈夫だよね」とか話したりしますが、

そうでもない限りはできるだけJT・他参加者からついた点数に従ってアロケするのがいいかな?と思います

 

 

○どの試合にアロケするか?

 

予選の目標は「公平な試合の結果、本選出場に値する強さのチームがブレイクすること」だと思うので、

基本的にはブレイクを左右する部屋を注視する必要があると思います

※交流を重視する大会(特に初期の1年生大会など)などもありますが、そういう例外はここでは除外します

 

ブレイクを左右する部屋、ってどこでしょうか?

典型的な例でいくつか考えてみます

 

Asian(3 vs 3)の大会で予選4試合の場合、大体のケースで「3勝がブレイクのボーダーライン」になるようにブレイク数が調整されると思います
(3勝でブレイク、2勝はブレイク落ち)

 

そうすると、2回負けた時点でブレイク落ち確定なので
何試合目かによらず、1敗のチームがいる部屋は実質バブルということになりますね

 

BPであれば計算はもっと複雑ですが、Asianの場合と同じく「負けたらブレイク落ち確定」のチームがどれくらいいるか、という観点で考える形になります

 

 

ですがここで重大なトレードオフが発生するのが、大会のジャッジアロケです

仮に1敗チームがいる部屋にスコアの高いジャッジを優先して配置すると、いわゆるトップラウンド等ハイレベルな試合をジャッジできる人がいなくなってしまう可能性が高いです

 

スコアが高いジャッジと言うのはもちろん「フェアにジャッジができ、正しい勝敗を出すことができる人」が本質ですが

往々にしてジャッジスコアが高い人は、物量の多い試合・めちゃくちゃクロース(接戦)な試合のジャッジも上手い事がほとんどです

 

逆に、ジャッジスコアが低い(ハイレベルラウンドをジャッジできない)人をハイレベルラウンドにアロケしてしまうと、

ディベーターの不満につながるのみならず、その方のジャッジスコアが下がってしまい結果ジャッジも不幸になることが多いです
(無理な負担を強いることになっているので)

 

ですので、「ブレイクを左右する部屋に良いジャッジを入れる」一方で、「ハイレベルなラウンドも良いジャッジを入れる」というバランスが重要になってきます

 

 

 

以上を踏まえて、ちょっとだけアロケのイメトレ(練習)を書いてみたいと思います

 

以下の試合のジャッジアロケをするところと仮定しましょう(一旦チームの強さ・勝ち数は無視)

 

  Gov Opp
Room1 きのこの山(関東) たけのこの里(非関東)
Room2 赤いきつね(関東) 緑のたぬき(関東)
Room3 豚骨ラーメン(非関東) 醤油ラーメン(非関東)

 

設定は雑ですが、ジャッジプールは以下の通りです(一旦ジャッジスコアは無視)

ジャッジ 大学・地域 ディベート 性別ジェンダー
関東 1年 cis-hetero-男
関東 4年 cis-hetero-男
関東 3年 cis-hetero-女
非関東 3年 not cis-hetero
非関東 4年 cis-hetero-女
非関東 2年 cis-hetero-男

 

実際の大会であれば実力を考慮して、単チェアの部屋と3人ジャッジの部屋を作ることも想定されますが
チームの強さ・ジャッジの上手さは一旦無視してるのでここは2人ジャッジ×3部屋としましょう

 

1つの回答例(筆者の意見)はこんなかんじです

 

  Gov Opp Judges(順不同)
Room1 きのこの山(関東) たけのこの里(非関東)
Room2 赤いきつね(関東) 緑のたぬき(関東)
Room3 豚骨ラーメン(非関東) 醤油ラーメン(非関東)

 

これは単純に各部屋の地域・性別ジェンダーダイバーシティを考慮しただけに見えますが、もう1ポイント実はあります

それは、Room1のジャッジの入れ方です

バイアス・ディベート価値観の近さ・親しさ、様々な理由からジャッジは自分の地域のチームに勝ちをつけやすい可能性があります

だからこそRoom1は特に関東・非関東ジャッジ両方がいる必要がありますが、

仮に赤(関東1年生)と緑(非関東4年生)をアロケしてVoteが割れた場合、1年生の赤が萎縮して簡単にVoteを変えてしまう可能性などが考えられます
(1年生だから簡単に4年生に屈してしまう、というのもステレオタイプではありますが、あくまでも思考実験として捉えてもらえると)

 

なので、地域の差でVoteが変わる可能性がある部屋では、地域間のPower imbalanceがない方がいいかな?ってのが個人的な考え方です

 

 

 

今度はこんな状況ならどうでしょうか?

 

Round 3   Gov Opp
2勝同士 Room1 きのこの山(関東) たけのこの里(非関東)
1勝同士 Room2 赤いきつね(関東) 緑のたぬき(関東)
0勝同士 Room3 豚骨ラーメン(非関東) 醤油ラーメン(非関東)

 

ジャッジ 大学・地域 ディベート 性別ジェンダー ジャッジスコア
関東 1年 cis-hetero-男 7
関東 4年 cis-hetero-男 9.5
関東 3年 cis-hetero-女 8.5
非関東 3年 not cis-hetero 8
非関東 4年 cis-hetero-女 9
非関東 2年 cis-hetero-男 8

 

まず本来的には、ジャッジスコアが高い3人をチェア要員とするのが普通かなと思います
(実際の大会ではボーダー近いジャッジをチェアにおいてOAしてもらうことで、パネル・ディベーターから多角的に評価しブレイクできるかどうかをチェックすることもありますが、今回は一旦無視します)

 

大体の大会のジャッジスケール的に「8点はまあチェアやっても大丈夫」なラインだと思うので、
Room3のチェアは赤以外の誰かにしよう、ということで一旦検討は後回しにしましょう
(勝ち数が低い部屋を軽視しているようで本当に良くないのですが、リソーストレードオフ的には仕方ないこともあるので・・・)
(Rookie breakなどある場合は0勝同士でもブレイクかかってたりするので別ですが、今回は一旦無視)

 

 

状況を整理すると、各Room1,2に求められるものはこんな感じでしょうか

Room1

  • 地域差バイアス・Vote割れを考慮し、できるだけジャッジの実力・発言力が近い関東・非関東ジャッジを入れたい
  • トップラウンドでハイレベルになることが予想されるので、点数の高いジャッジを入れたい

 

Room2

  • 地域差は特に関係ないので最悪無視しても大丈夫
  • ブレイクがかかっており勝ち負けの重みが大きいので、フェアなジャッジを担保したい

 

これを前提にどうするか、ですが

あくまでも一例として、個人的にはこうなるかなあと思います

 

Round 3 Gov Opp Judges(順不同)
2win Room1 きのこ(関東) たけのこ(非関東)  
1win Room2 きつね(関東) たぬき(関東)
0win Room3 豚骨(非関東) 醤油(非関東)  

 

Room1はハイレベルになると考えると、少なくとも赤はアロケしないほうがいいかもしれないでしょう

一方でRoom2もまあ競ることは予想されるので、良いジャッジは最低1人は欲しいですし、割れたときにディスカッション・Voteできるようにしておきたいです

 

なのでまず点が高い青・緑の2人を上からRoom1, 2に入れます

そうするとRoom1は地域・ジェンダーダイバーシティ的に紫を入れるのが良いでしょう

 

Room2はブレイクがかかっているのでできるだけジャッジの質を担保したいが、9.5の青はRoom1に入れたまま動かしたくない
ので、Room2は人数を増やすことで対処しましょう、ということで赤と黃を入れて、結果こんな感じの案になりました

 

 

ただこれざっくり考えただけですし、実際の大会ではコンフリクトや「前のラウンドでジャッジしたので次は別の人を入れたい」とかあったりしてもっと複雑なので

上記はあくまでも思考実験の一例として考えてもらえると有り難いです