とあるまさおの討論録(ディベートログ)

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まさおがディベートについて思ったことをつらつらと書いていきます。ご自身の意見等あれば是非コメントしていただきたいです。Twitter→@masaoopen

R39:Asian Bridge Motion解説②(Round1 Part2 national liberation movement)

はいどうもです、忘れないうちに続きを書いていきたい所存で頑張ってます

 

あ、前回のクォータの議論に追加でですが、「クォータを通じて登用された人は『その集団(性別・人種とか)を代表した鑑・Role modelとしての行動』が期待され、その重圧がその人にとって良くない」みたいな議論もどっかで聞いたことある気がします

(どこかのニュースとかだったと思うのですが軽く調べて見つけられませんでした・・・)

 

さて、切り替えて次のMotionです

 

中:THBT figureheads of national liberation movement should refrain from running for elected office after their movements succeed.

 

 

前提の確認
  • 定義

まず前提としてですが、figureheadsはleaderと同じ意味でいい気がします

(ネットで調べると下のような意味が出てきますが・・・)

FIGUREHEAD | meaning in the Cambridge English Dictionary

someone who has the position of leader in an organization but who has no real power

 

  • 具体例

あと「具体的に誰やねん」って話ですが、個人的にはアウンサンスー・チーとかじゃないかなあと思います、知らんけど(勉強不足)

 

掘り起こしたら大会で出た当時(ICUT 2013)のWordingには入っているので間違ってなさそうすね(PMのキムテヨン?って方めっちゃかっこいいスピーチするので、これ以外の音源もぜひ聞いてみてください)

youtu.be

 

ちなみにアウンサンスー・チーミャンマーは特にここ数日間ニュースになってますね

Thailand WUDCに向けて勉強してたのもすっかり抜け落ちて思い出せませんが、軍事政権の話とか宗教対立によるマイノリティ弾圧(ロヒンギャ)とか、知っておくと為になる話は多いので興味がある方はぜひ調べましょう

 

  • Motionのスコープ・Topicality

このMotionですが、「このFigureheadの『政治に参加する権利』にまつわる議論」がどの程度Relevantなのか怪しい、というか決めかねるんですよねえ

 

Wordingが"should refrain from running for elected office"ってなってますよね。

これを単純に否定すると"should not refrain from running for elected office"となり、つまり「控えるべきか控えないべきか」っていう対立になる訳なんですが

「Xがある行為Yを控えるべきかどうかの議論」って、「XがYをやりたいという意思」が存在しないと発生しない議論と取ることもできると思うんですよね

 

Motionぱっとみてストレートに考えたら「出馬すべきかしないべきか」なんですが、Wordingに忠実になると上記のようなニュアンスも出てきてしまうのでごちゃることがあります

(僕個人的にこれを「Wording原理主義」と呼んでいるんですが、いわゆる「モーションスピリット(Motion spirit? split?)派」としょっちゅう対立が起きるので困ってます。ダレカタスケテクダサイ)

 

ここは上記動画の時とWordingが違うので参考にならないかもしれないです

(動画の中は"should not become politician"となってます。まあとはいえ動画軽く見直してみたら、Oppは普通にガッツリ政治家になる権利?国民の選ぶ権利?の話してそうでした)

 

また思ったのですが、このMotionってMovementが成功するまでの話ってできるんですかね?

例えば「どうせ後々選挙に立候補して国を運営してくれるわけではないってわかってるから、支援が集まりにくい」とか

まあよくわかんないっすね・・・ 

 

 

Motionに使えそうな一般論
  • Movementの分析

Movementといっても千差万別なので一概には言い難いですが、抑えておくべき事項はいくつかあります

(※下記全てがこのMotionに当てはまる訳ではないと思うのでその点だけ注意してください)

 

目的・理念

大体のMovementは一枚岩ではなく、異なる目的や理念を持って活動している人が多く共存している状態だと思います

 

例えば「Feminist」(を自称する人)の中にもいわゆるMisandryに近い人もいるにはいるでしょうし、そこまで極端でなくとも皆さんご存じであろう"2nd wave vs 3rd wave"みたいな対立もあります

 

ビーガンの中にも宗教を理由とする人、単に倫理的にそうしたい人、あるいはひょっとしたら食肉生産に伴う環境破壊や資源の浪費に反対する人もいるでしょう

 

なのでディベートにおいても過度に一般化・単純化するのではなく、層や多様性を意識すると良い議論ができることが多いです

 

組織・体制

めっちゃバラバラな運動もあるぽいですが、しっかりした運動や団体だとLeader - Executive - Member - Supporterみたいになってるんじゃないかと思います

(上記階層構造はどこかから拾ってきたわけじゃなく僕が適当に考えただけですが、イメージとして

Leader:メディア露出とかも多い先頭に立つ人、インフルエンサーとか

Executive:前にはそんなに出ないが主要人員として活躍する人

Member:積極的にデモとか活動に参加する人

Supporter:積極的に活動に参加はしないけど、Movementの活動や思想を理解して、Social mediaでチェックしてたりシェアしてたりする

みたいな感じです。自分で書いておいてなんですが結構よいのではこれ?)

 

社会・外部環境

Movement外のアクターは、対Movementへの感情に基づいて、「アンチ」「無関心」「支持者(=Suppporter)」に分類されると思います

(もちろん3タイプに完全に分かれるのではなく、全てはSpectrum(程度もの)です)

 

また、個人だけでなく企業やメディアも存在し、様々な場面で相互に影響しあっている点を忘れないようにしましょう

 

  • Weak Democracyの状態

 Weak Democracyと言っても様々ですが、今回のMotionにより近いのは「民主化直後の状態(或いはそこから続く民主主義)」だと思います

色々特徴はありますし調べたら大量に出てくるとは思いますが、ディベートで主に使うと思われるのは

 

・一部に権力が集中している

-民意の反映や権力のコントロールである民主主義・選挙が機能していない

-軍事力や財力を持った一部の集団の影響が強い

-紛争で活躍したサイドや人物、その血筋等が強い権力を握る

 

・国全体が発展していないことが多い

-紛争直後等の状態でインフラとか破壊されてるし経済も機能してないことが多い

-上記のように政治が機能していないので国全体に富が行き渡らない

 

・根強い対立や”反X感情”がある

-民族や宗教に基づいた対立後である

-深刻な経済格差が人種・宗教・地域と高い相関関係にある

 

とかかな~と思います

イメージがわかない人は、ジンバブエでムガペが何してたかとか調べると面白いんじゃないかなあと思います

 

  • DemocracyのPrinciple的なサムシング

 ひとえにDemocracyと言っても色々あるので、Principleも色々あるのですが

今回は適当にいくつかさらってみようと思います

(また某浅井さんのブログに書いてあるのを発掘したので貼らせていただきます)

youjin2237.hatenablog.com

 

民主的(政治的)決定の限界

政治や民主主義について語る時、大体の人が「人々が決める!自己決定!主権!」とか言うと思うんですが、完全に人々に任せっきりにしてる国や地域はほぼないと思います

民主的決定の上位概念として存在する「憲法」とかまさにそうで、民主的決定をコントロールする存在として機能していますよね

これは単純に「国民はおバカ」だからとか、「多数決の暴力暴走を防ぐ」とかそんな感じの理由があると思います

 

直接民主制-間接民主制のスペクトラム

 

(民主主義と対立?反する政治体制として独裁(Autocracy)や官僚政治(Technocracy)がある気がしますが、今回はそこら辺はスキップします)

じゃあ憲法に縛られない限り国民がなんでも決められるのかというと、そうでもないです

国民は投票を通じて政治家を選んだり、ロビイングや世論の形成を通じて政治に影響したりしますが、全部を一から十まで決めることはないですね

 

じゃあなんで国民が全部決める「直接民主制(Direct Democracy)」ではないのか?

理由はいくつかあると思います

 

実現性の問題

-数千万・数億の人々が集まって議論をして法律を作るとか無理すぎワロタ

時間/速さの問題

-実現性をクリアしたとしてもめちゃくちゃ時間がかかるので現実的ではない

質の問題

-基本的に市民はおバカ(主語がでかい)なので、烏合の衆で決定を下してもろくなことにはならない

 

ここまで書いたところで、「じゃあ全部独裁とか官僚政治で決めたらいいじゃん!」ってなるかもしれませんが、そうはならない理由がいくつかあります

 

エリート政治になる

-学歴や血縁に基づいて一部の集団・人のみが政治に参加することになる

国民の意見が反映されない

-一部の集団のみの政治では国民のニーズが満たされない

(何でそうなるか?はその政治をする「一部の集団」のIncentiveやCapacityを考えてみてください)

国民が政治に無関心になる

-自分に決定権がないので関心を持たなくなる

 

てな感じで、全部を国民に投げるわけではないけど、全部を偉い人に任せるわけでもなく、

政治の詳細を決める人「政治家」を選ぶことで政治に関与する間接民主制が多くの国で取られているんですね 

 

ちなみにここら辺を深く考えてくると「何で政治とか国って必要なの?自分のことは自分で管理してお世話すればよくね?」とかの考えに至るかもしれませんが、

そこら辺はさすがに今回のMotionから遠すぎるのでスキップします・・・

無政府状態と政府状態の比較をすると面白いと思います。あとそこら辺は↓のブログで書いていた気がしなくもない・・・)

 

debate-masao.hatenablog.com

 

投票権を持つ条件

投票権に関するMotionは腐るほど出てきます(Round1の3つめのやつ含め)

で、政治に参加する権利に関して線引きをしようとすると大体3つくらいに収束する気がします

 

で、その3つに入る前に大事なのが「アナロジーの処理」だと思います

結局Principleってふわふわしてるので現実味のある例とかで殴ると弱体化しやすいです

投票権の線引きでよく出てくるアナロジーは「未成年」と「移民(国籍を取得していない労働者)」だと思うので、それらを念頭に下記線引きを見てみましょう

 

1.無条件で全ての人に与えられるべき(Equality)

投票者の状況や能力によらず、全ての人に等しく与えられるべきという線引きです

理由としてはおそらく、「国の政治とは常に個人の権利の侵害を伴うため、その権利侵害に対抗する手段(正当防衛)として投票権を持つべき」みたいな感じになるんじゃないかなあと思います

 

ただこのラインは、厳密には線を引いていないハードスタンスなので、未成年とか移民のアナロジー処理に困る傾向にあります

(とはいえこの「投票は正当防衛だ」みたいな概念はアーギュメントをよく使う気がします。正当防衛おじさんの賜物ですね)

 

2.社会への貢献と引き換えに与えられるべき(Reciprocity)

投票者が社会に貢献しているという条件に基づいて投票権を決めようという線引きです

理由としては「政治とは個人に利益を与えるシステムなので、そのシステムに関与する権利を得たかったら対価として、労働や納税を通して社会に貢献しなさい」みたいな感じかなあと思います

 

アナロジーの処理を見てみると、

未成人:独立しておらず法的枠組みの中では親などの庇護下にあるので、個人として社会に貢献しているとは言えない

移民:労働はしているものの、長期間国に貢献しているとは言えない/国籍を取得するに至るほどの貢献はない

(国によりますが、一定のお金を払ったりX年間居住してたら国籍を取得できたりする地域は多い気がします)

って感じでまあよさげな気がします

 

で、そうすると「他にも社会に貢献していない人はいるぞ!」とか言われるんですが、

貢献するキャパが無い/小さいため義務を免除している、って言っとけばいいと思います

そしたら障がいや病気のせいで労働が困難な人等の例外措置も正当化できると思います

ニートは分かりませんが)

 

3.投票を通じて与える功利に基づいて与えるべき(Utility)

その投票者がきちんと考えて「有用な」投票をできるかを基準として投票権を与える線引きです

理由としては、「政治って結局社会の功利を最大化するためのツールでしかないので、その目的に寄与することが重要である」って感じになるかなあと思います

 

で、ここでたまに「Rationality」とかが基準に入ってくることがあるんですが、それは

・Rationalじゃないと社会の功利を最大化する方法を考えられないから

・政治とはリソースの配分であり、それは常に他者の権利を侵害しているため、責任をもって投票してほしい

とかがあるかなあと思います

(各投票者が社会全体の功利を考える義務があるのか、あるいは自分自身の功利だけ考えたらいいのか、という対立みたいなものもあると思います。これについては1のEquality/正当防衛とも絡んできますが、どこか別の機会で詳しく書きたいなあ・・・)

 

じゃあアナロジーの処理はどうかというと、

未成人:義務教育も終わってなかったり社会経験も少なかったりと、功利を最大化する方法を考えるキャパが無い

移民:国に来て年数も浅いし理解も浅いので、考えるキャパが無い

とかになるかなあと思います

 

この投票権の線引きについては、学年生大会とかOpen大会の予選でよく出る古典Motionにおいて特に有用な気がするので覚えておくといい気がします

 

 

Motion固有っぽい話

 ここまで長く書きすぎてMotionを忘れている方もいるかもしれないので再掲

 

THBT figureheads of national liberation movement should refrain from running for elected office after their movements succeed.

 

  • Context

 まずこのMotionで重要になるのが、「今(=after their movements succeed)ってどういう状態何?」ってことです

 

 まあ多分ですけど、民主化を阻害していた独裁者なり集団なりは一旦追い払って権力を弱体化することには成功してるけど、完全に無力化するには至っていないくらいなんじゃないかなあと

なんでかっていうと、National liberation movement(以降NLM)を支持する人も多い一方で、きっとAnti NLMの人もたくさんいるはずだからです(現行のRegimeの甘い汁を吸ってる既得権益者とか)

 

とはいえ選挙が始まりつつある段階でもあるので、めちゃくちゃカオスな状況でもないのかなあと思います

(紛争後にどう民主主義・選挙などに移行するのかは国のケースタとかあるとめっちゃ強いと思うので調べてみてください。Westの介入で成功した例・失敗した例・Westの介入なく成功した例・失敗した例とかがあると良いのではないかなあと思います)

 

  • Govの話

1.求心力が強すぎて選挙がまともに機能しない

【メカニズム】

 1)知名度・人気

NLMのトップともなる人だと、知名度や人気がめちゃくちゃ高いと思います

なので、きっとみんな盲目的にその人に投票するだろうし、そうしない人には積極的and/or無言の圧力みたいなものも働くのではないでしょうか

 

 2)リテラシー

特に、紛争後とかのコンテクストだと教育が行き届いていなかったりして政治のリテラシーが低い可能性があります。その環境下で人々がきちんとマニフェストとかを考慮して投票するのは難しいのではないでしょうか

 

 3)メディアの普及

更に、国や地域にもよりますが国のメディアとかが発達普及してない場合、そもそも「ほかの対立候補と比較する」とかも難しい可能性があります

 

※2)とか3)とかのNLMのリーダーに固有でない分析・問題をばらまきすぎると、APどう改善するかを示すBOPがめっちゃ高くなるのでバランスは考えましょう

 

インパクト】

 1)投票のPrincipleに反する

国民がRationalに考えられない状況はヤバい!みたいな感じです。なんでRationalじゃないといけないのかは上を参照

(「結局Practicalに功利を最大化できるかどうか」がボトルネックになるとPrincipleを説明する意味が薄れるのでそこは注意)

 

 2)NLMリーダーへの権力集中が進み、以下のような問題が発生

・権力の濫用:NLMのリーダーは良い人かもしれないが、どんな人でも権力を握るとつかわずにはいられないので、暴走し始めて人民が苦しむ

・長期的な政治の安定性:権力が一か所(NLMリーダー)に集中していると、政治が極端に個人のカリスマや能力に依存しているせいで、その人がいなくなった後に政治が不安定になる可能性が高い

 

APどうベターかは考えてみてください(適当)

ポイントは、NLMリーダー以外にきちんと政治をできる人がいるのか?ってことですね

 

 

2.Anti NLMが過激化して対立が悪化

NLMのリーダーが政治の世界にいることで、Anti NLMが社会から疎外されていき過激化する、みたいな話も言えるかなあと思います

【メカニズム】

 1)権力がNLMリーダーの基に集まることで、Anti NLMへの弾圧とかが始まって反発が起きる

 

 2)NLMリーダーとはいえ権力の一極集中に不安を覚えた一部の人がAnti NLMの扇動とかに乗せられる

(これを言いすぎると、SQの問題にしていた「国民がきちんと考えて投票できない」と矛盾する可能性がある気がするので注意?)

 

(他にもメカニズム増やしたいんですが、「Glorification of NLMリーダーが悪い」みたいな話になってRelevancyとかExclusivityが怪しくなりそうだったのでやめておきます)

 

インパクト】

 1)暴動とかデモが起きて人が死ぬ

 2)最悪の場合、紛争が再開する

とかかなあと思います

 

  • Oppの話

 1.NLMリーダーの立候補する権利・国民の投票で選ぶ権利

「政治が上手くいく!」とかの次元ではなく、そもそもrefrainするのが良くないって次元の話手ですね

上の方のMotionのスコープのとこで書いたように、立候補したい人が立候補する権利を持つのが民主主義国家なのでRefrainする理由がない、不当である、見たいに言える可能性はあります

 

また、さらにワンチャン言えるかもしれないのは「国民が選挙を通して判断する権利」とかかなあと

NLMのリーダーくらい重要な人が政治にかかわるべきかどうかってめっちゃ重要な事項なわけなじゃいですか

それを国民に決めさせずに「やっぱちょっと出馬辞めます・・・」っていうのはどうなんだ、

みたいなノリですね

 

2.政治の安定性

NLMのリーダーが出馬したら当選する前提にはなりますが、政治が安定する話は普通にできるかなあと思います

 

【メカニズム】

 1)政治がそもそも不安定

これはGovもある程度コンシードしてくる(否定できない)と思うのでさらっと説明してイラストする程度でいいでしょう

 

 2)NLMのリーダー以外に国を束ねるカリスマを持った人がいない

GovがSQのContextをヤバイ感じに説明すればするほど、教育とかも機能してないので他に良い候補者がいない、っていう風に言えるかなあと

 

 3)NLMのリーダーなら束ねることができる

これはGovの「求心力がありすぎる」とほぼ同じ分析になるので割愛(相手が言ってこない場合には説明が必要)

 

インパクト】

相手の「権力集中がやばい」みたいなのとComparativeにするために、「そんなに権力集中は起きない」あるいは「起きたとしても良い(NLMのリーダーは良い人だから大丈夫、発展が早く進む等)」の分析をしっかり出すと共に

リーダー不在の状況がいかにやばいかをイラストする必要があります

 

 

 ちょっとOppの話が雑な気もしますが、まあとりあえず今回はこんなもんで終わりたいと思います。

次回からはもっと省エネ運転したい・・・